監修:畠山耕治(金属作家、金沢美術工芸大学教授)
主催:ギャラリーこちゅうきょ
協賛:東京アートアンティーク2019
https://www.tokyoartantiques.com/
金属表現というものがある。美術、工芸、デザインと様々な分野において金属はその表情を異にしてきた。また技法においても古来より、鋳造・鍛金・彫金とその分野は確立されてきた。今ここに北陸を拠点に金属を使って制作を行っている4人の作家たちにそれぞれの技法を用い、それぞれの表現をしてもらった。ここで重要なのは、表現として美術の領域にあった金属が、もはやその領域を超えての存在価値が求められていることにある。より多様な広がりを持ち、金属という素材がその可能性を示すのである。
金属作家/金沢美術工芸大学教授 畠山耕治
金沢にて学び、同エリアを制作拠点とし、孜々として制作に励まれる、若き金工の名手た ちによる、最新作の競演の場を設けました。
金属造形の第一人者・畠山耕治先生のご監修ご推挽により、坂井直樹(鍛金)、久米圭子(彫金)、水代達史(彫金)、上田剛(鋳金)の諸氏に制作を依頼しました。
各々、自家薬籠中となった伝統的技法に磨きをかけ、さらには高邁な美意識と造形精神とを注ぎ込むたゆまぬ努力の成果=精華が結晶された作品群になりました。
次代に発展する金工芸術の無限の可能性を看取していただきたく存じます。
後代に継承されるにふさわしい品位が高く、魅力を放射する作品ひとつひとつから、様々なメッセージを読み取っていただきたく、ご案内を申し上げます。ぜひ、ご高覧ください。
ギャラリーこちゅうきょ
人は工芸に「用」だけを求めたのではなく、「美」を求めた。
つくり手は求められた「美」に対し、「つくる」喜びを手に入れた。
この関係が「人間」と「もの」を繋げる高い芸術精神を育んできた。
その環境につくり手として身を置けることに喜びを感じる。
坂井直樹
生物をモチーフとしたオブジェを制作しています。特に生物全般における内部構造―どんなに小さな生物でも持ち合わせている、生きていくための仕組みを意識しています。目に見えない微細で複雑な仕組みは小宇宙を髣髴とさせ、とても神秘的で魅力的だと感じており、そのイメージを大切にしています。
金属は熱を加えると柔らかくなり、叩いたり、削ったり、磨いたりと加工を加えると硬化していきます。制作工程の中で様態を変化させる金属は、自分の手の中で育っていくようだと私は感じています。自分がモチーフに対して感じている魅力と同様に、愛でられる魅力を持った作品が自分の手の中で育って欲しいという思いを持ち制作しています。
久米圭子
金工技法の加飾を主とする彫金技法を中心に、生き物をモチーフとした作品を制作しています。
生き物のもつ美しさと技法を含めた金属という「素材」、そして自分が制作のテーマとしている「子供心」「巧妙」などといった自身が得た着想を融合させることで新しい提案が出来たらと考えています。
今回の展示では飾る空間を意識し、工芸という用の美から発する造形としての美しさを表現しました。
水代達史
金属は一見硬く無機質なイメージがあります。
しかしそれは刹那の表情であり、長い時間の中で金属は、流動的にその性質を変化させ、表情を変化させていきます。
それは時に有機的に、叙情的に、繊細に、見る者の心を揺さぶります。
私は、金属という素材の持つ潜在的な色や表情を引き出し、形にすることによって、自然物に対する原初的な好奇心や畏敬の念を想起させるような作品を、制作したいと考えています。
上田 剛
撮影:S&T Photo
| 2019 | 東京藝術大学美術学部工芸科を卒業 |
| 2011 | 東京藝術大学大学院美術研究科彫金を修了 |
| 2012 | 東京藝術大学彫金研究室教育研究助手 |
| 2015 | 東京藝術大学彫金研究室非常勤講師 |
| 現在 | 金沢美術工芸大学准教授 |
<受 賞>
| 2009 | 東京藝術大学/原田賞 東京藝術大学/台東区長奨励賞 |
| 2010 | Via art 2010/審査員池内務賞 |
| 2019 | 淡水翁賞/優秀賞 |
| 2020 | 宗桂会大賞 |
| 1973 | 群馬県に生まれる |
| 2002 | 東京藝術大学大学院博士後期課程鍛金研究室修了、博士学位取得 |
| 2003 | 東京藝術大学非常勤講師(~2005) |
| 2010 | 金沢大学非常勤講師(~2012) |
| 2011 | 金沢美術工芸大学非常勤講師(~2012) |
| 2013 | 金沢卯辰山工芸工房専門員(~2018) |
| 2019 | 東北芸術工科大学准教授 |
| 日本工芸会正会員 |
<受 賞>
| 2003 | 東京藝術大学/野村美術賞 |
| 2010 | 金沢市工芸展 世界工芸都市宣言記念賞 |
| 2012 | 日本伝統工芸金工展/宗桂会賞(2015) 淡水翁賞(美術工藝振興佐藤基金)/優秀賞 |
| 2013 | 世界工芸コンペティション/準大賞 |
| 2016 | テーブルウェア大賞展/大賞&経済産業大臣賞 石川の伝統工芸展/奨励賞 公益財団法人宗桂会/宗桂会大賞 |
| 2017 | 日本伝統工芸金工展/朝日新聞社賞 |
| 2018 | フンボルトフォーラム茶室デザインコンテスト(ベルリン)/最優秀賞 |
| 2019 | 石川の伝統工芸展/第60回記念特別賞 |
| 2021 | 金沢文化活動賞 |
| 2022 | 創造する伝統賞(日本文化藝術財団) |
| 2024 | 伝統文化ポーラ賞/奨励賞(ポーラ伝統文化振興財団) |
| 1985 | 千葉県に生まれる |
| 2011 | 金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科修士課程工芸専攻修了 |
| 2014 | 金沢卯辰山工芸工房修了 |
<展覧会>
| 2013 | 個展(ギャラリーおかりや) 以後隔年 |
| 2017 | 個展(日本橋高島屋アートアヴェニュー) |
| 2020 | 国際伝統芸術招待展(上海芸術品博物館/中国) |
| 2021 | Contemporary Metalworks 変貌する金属(岡山県立美術館) 金工の深化Ⅱ(和光ホール) |
<受 賞>
| 2011 | 修了制作/学長賞、審査員特別賞 |
| 2013 | 清州国際工芸公募展/特選 |
| 2014 | 金沢美術工芸展/金沢市長最優秀賞 |
| 2017 | 公益財団法人宗桂会/努力賞 |
| 2019 | 淡水翁賞/優秀賞 |
| 2021 | 金沢市工芸展/世界工芸都市宣言記念賞 |
| 2024 | 金沢市工芸展/金沢商工会議所会頭賞 |
| 1986 | 奈良県に生まれる |
| 2010 | 金沢美術工芸大学工芸科鋳金を卒業 |
| 2012 | 東京藝術大学大学院美術研究科工芸専攻鋳金を修了 |
| 2022 | 金沢美術工芸大学工芸科講師 |
<展覧会>
| 2017 | ワールド工芸100選(富山県美術館) |
| 2021 | Contemporary Metalworks 変貌する金属(岡山県立美術館) |
| 2023 | 生成 Bringing Things to Life(佐藤記念美術館、富山) |
| 2024 | いもののかたち2024(川口市立アートギャラリー・アトリア) |
<受 賞>
| 2011 | 佐野ルネッサンス鋳金展/奨励賞 |
| 2012 | 東京藝術大学/原田賞 |
| 2022 | 金沢市工芸展/宗桂会賞 淡水翁賞/最優秀賞 |