香川県には、彫りや色漆を特長とする独特の技法を用いた漆芸があります。
今回出展する6名は、香川県漆芸研究所の修了生で、江戸時代からの伝統技術を引き継ぎながら新たな感覚で自身の作品の制作に励んでいる、これからの香川漆芸を担う若手作家たちです。個性あふれる香川漆芸の魅力をぜひご覧ください。
香川県政策部文化芸術局長
小川 剛
香川県漆芸研究所を修了し「彫と彩」を独自の視点で表現される6人の漆芸作家による新作展を開催いたします。
各々香川が誇る伝統技法を十分に踏まえて、高品位で高品質の作品制作に研鑽を積んでこられています。造形、意匠に創意工夫を凝らし、個性あふれる作品のひとつひとつが将来に継承される資質十分といえましょう。
実り多いラインナップとなりました。ご来駕ご高覧くださいますようご案内を申し上げます。
ギャラリーこちゅうきょ
うつくしいとか畏敬の念だとか
瞬間の感情を一日一回うるしを塗りつつ
時間をかけて咀嚼し消化し吸収し
とこしえのものとして かたちにしたい
浅野絵莉
創作の拠点としている豊田市の小原という地域は自然豊かなところ
です。この地には古から息づく紙漉きの文化があります。
自ら漉いた和紙と漆で作る「紙胎(したい)」の素地に香川で学んだ
「蒟醬(きんま)」を組み合わせ、素材をいかしつつモダンで清新な表
現を追い求めています。
安藤源一郎
時間をかけてじっくりと取り組める作業が心地良く、日々の積み重ねを形にしたくて制作しております。
近年取り組んでいる堆漆は色漆を多用した鮮やかな色が特徴で、何層にも積み重なった漆の層を確認
することができます。
堆漆ならではの触感、輝きを感じていただければと思います。
泉谷麻紀子
描き重ねてゆく「蒔絵」と、漆を塗り重ねて彫る「彫漆」。
足し算と引き算。真逆の技法を京都と香川で学びました。
その両方の技法を使い、自分が日々の中で美しいと感じた
情景を形に残したいと思い制作しています。
加藤友理
私的に好きな空間にあったらいいなぁ、面白いなと思えるモノを漆で表現できたらと思っています。
色が好きで色にこだわって丁寧に気持ちを込めて制作しています。
坂本征志
漆は長く残る素材であると強く意識している。今しか見ることのできない都市の密度や色、気象の変化、植物の成長を思い描くことで、現代に生きる私たちの性格や力、感覚を残すことができると考えている。しかし、未来の人や、異なる民族の人々との対話において、同じ価値観や言語は通用しない。また、社交的であることは人間の美しい特徴で、隣人とのコミュニケーションは避けて通れない。私の作品が数世代先の人々の互いに理解し、繋がるための道具となり、会話を生むことを願っている。
中田真裕
撮影:S&T photo